某風紀委員の独り言 <2>


最近の黒主学園は千客万来です。
この間は、夜間部の一条センパイのおじい様がやってきました。
「いちおー」さんというんだそうで、「一条いちおー」という名前なのかと思ったら、違ったみたいです。理事長に笑われてしまいました。
ちなみに、漢字で書くと「一翁」なんだって。
「一翁」の意味が分からなかったので理事長に聞いたら、
「ニックネームみたいなものだよ。“翁”は“おじいさん”という意味だから、“一条さんちのおじいさん”ってことかな」
と教えてくれました。
そっか。じゃあ、用務員の渡辺さんを皆が「なべジイ」って呼んでるのと同じようなものなんだ。
そう理事長に言ったら、
「そうそう、まさにそれだよ! でも一条家は貴族だからね、“いちジイ”じゃあんまりでしょ? だからちょっと気取って“一翁”って呼んでるだけなんだよ。ていうか、彼がそう呼ばせてるだけというか。にしても、やっぱりボクのゆっきーは賢いね」
と褒められてしまいました。エヘ、照れちゃうな。
でも「一爺」のほうが可愛くて親しみを持てるのにね。お貴族様って面倒くさい。


そうそう、その一翁さんは、いかにも吸血鬼! といった、真っ黒なマントに身を包んでいたんです。
言葉遣いまでえらそうで、雰囲気もおどろおどろしいの。
お年寄りなのに、凝った演出をしてるなぁと感心してしまいました。
私は初めて本物の吸血鬼を見たような気がして、ワクワクしたんです。
毎日身近で本物の吸血鬼を見ていますが、夜間部の皆さんは見た目は普通の現代っ子だから、あまり吸血鬼っぽくないし。
それも理事長に言わせると、
「一翁は大貴族というだけでなくて最古参の吸血鬼だからね。たとえ今の時代にそぐわなくても、吸血鬼としての独自の美学とこだわりを捨てられないんだろう」
とのこと。
意味はよく分からなかったけど、やっぱりお貴族様って面倒くさいな、と思いました。


それはそうと、「どうして招かれざる珍客ばかりがどーのこーの」と最初はブツブツ言っていた理事長でしたが、お客様が帰った後は満面の笑みを浮かべていました。
どうやら一翁さんから大量の寄附金をせしめ……じゃなかった、いただけたようです。
良かったね、お義父さん1KB


(2005/10/15)





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