某風紀委員の独り言 <1>


最近の黒主学園は千客万来です。
この間は、零の師匠だという吸血鬼ハンターの夜刈十牙さんがやってきました。
なんというか、いろいろと風変わりな人でした。


以下、私と零の会話です。


「ねぇ、零。吸血鬼ハンターって専用の制服が定められているの?」
「なんだよ、いきなり」
「夜刈十牙さんが個性的な格好してたでしょ? ウエスタンのコスプレじゃあるまいし、今時あんな格好で街中を歩く人なんかいないよね。だからあれは吸血鬼ハンターの制服なのかと思って」
「……吸血鬼ハンターには制服なんかない」
「ふーん。じゃあ弟子の零がいずれあの衣装を師匠から受け継ぐというわけでもないんだね」
「…………よしてくれ」(小声)
「ん? 今なんか言った? 聞き取れなかったんだけど」
「いや、何も」
「それにしても、“夜刈十牙”……夜の住人を刈りとる十の牙、か。吸血鬼ハンターにぴったりな名前だよね。ちょっと出来すぎって感じもするよ。たとえば山田太郎とか佐藤次郎とか実は本名はすっごく平凡で、勝手に職業ネームを名乗ってるだけだったりしてね。―――なーんちゃって」
「…………」
「零? (何故に沈黙?)」
「……俺はあの人には世話になったから………何も答えられない………」


零は苦しげな顔をして、貝のように口を閉ざしてしまいました。
……もしかして私は、言ってはならないことを言ってしまったのでしょうか。
地雷を踏んでしまったとしか思えません。


(2005/10/15)





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